出遅れ銀行株投資に勝機はあるか?

日本株式

らとは先日、富山銀行を購入しましたが、日銀の利上げ観測や直近の銀行関連の1Q決算の好調さから、株価の上昇率の低い下位の銀行に興味を持っています。今後銀行株なら猫も杓子も利上げで利益が伸びるのか?今から下位銀行を買って勝機がある(利益を享受できる)のかを1Qの決算から分析と個人的な見解を述べてみたいと思います。

まず結論から申し上げますと、下位銀行は金利上昇の恩恵を受けにくいが、株価上昇の余地はありそうだ というのが結論です。但し、予測を外しても配当と優待である程度のインカムを期待できる銘柄を選びたいと考えます。

出遅れ銀行株について

出遅れ銀行株の定義 -2022年末から23年の底値圏から株価2倍以下‐

出遅れとは何か?を勝手に定義してみます。現在、大手銀行株はものすごい右肩上がりのチャートになっています。その右肩が始まったのがおおよそ2022年末から23年の頭くらいです。ここを起点にメガバンク、地銀中上位の銘柄はばらつきはありますが3~9倍程度の株価になっています。そのため出遅れ銀行を2022年末から2倍以下付近であると定義してみます。

出遅れ銀行株と直近の決算における経常利益変化

上記の定義によって選んでみた銀行は下記の通りです。併せて直近の決算における経常利益の変化率を並べてみました。一部2倍、3倍を超えているも銘柄もありますが、参考程度に比較としています。

銀行1Q経常変化株価上昇率2026/8/12現在株価2022年末株価
富山銀行▲21.6%減益+33.4%2,3331,749
鳥取銀行+52%増益+59.71,8301,146
筑邦銀行+2.3倍増益+46.4%2,0271,385
東北銀行+5.3%増益+43.5%1,4611,018
福島銀行11倍増益+36.1351258
島根銀行赤字転落+4.96487464
大東銀行+11%増益+51.41,031681
宮崎太陽銀行+71%+120.22,4041,092
高知銀行赤字転落+49.21,062712
南日本銀行+1%増益+118.91,427652
豊和銀行+3.6倍増益-13.9478555
トマト銀行+2.9倍増益+68.41,7511,040
北日本銀行+58%増益+221.16,6902,127
大光銀行-60%減益+117.92,7111,244
東和銀行赤字転落+141.31,356562

メガバンクや中上位の地方銀行が大きく利益を伸ばしているのにかかわらず、下位銀行は伸びた銀行、減益や赤字転落になった銀行とマチマチですが、総じて株価が伸びていない現状が散見されます。これは利上げが銀行の利益に結び付いていないことが要因であると思います。それではなぜ利上げという増収の機会が銀行の利益に結びついていないのか?

下位銀行と上位銀行の決算内容比較

全部を比較するのは難しいので、下記の6行で比較してみました。
 ①地方銀行下位 富山銀行、鳥取銀行 … 保有株
 ②地方銀行下位 筑邦銀行、東北銀行 … 非保有株 増益と優待で興味あり
 ③地方銀行上位 横浜フィナンシャルグループ … 非保有 地方銀行最上位行(20兆円規模)
 ④地方銀行上位 第四北越フィナンシャルグループ … 保有 地方銀行上位(8兆円規模)

利ざやの確保状況 -上位行に対し、下位行は利ざやを確保できていない‐

日銀の利上げが利益に結びついているかどうかを測るには、まずは利ざやが増加しているかがポイントになるかと思います。損益計算書より「貸出で得られる利息」と「預金で支払う利息」を比較すると傾向が見えます。2り上位銀行については利ざやの伸びが15%ほどあり、下位銀行は10%にも満たないうえ、富山銀行は1.4%しかありません。

これは貸出利息による利息よりも、調達する預金金利の差にその傾向がみられます。上位行も下位行も貸出利息の伸びは120%程度でそれほど差は見られません。一方で預金利息は筑邦銀行で205%、富山銀行で194%と2倍近くになっており、貸出に対して大きく増加しています。上位行でも143%、169%と増えてはいますが下位行よりは若干少ないことがわかります。貸出金利に対して預金金利は利上げのタイミングが早いので、今後の2Q/3Q/4Qでは預金利息の伸びに対して貸出利息が伸びるかどうかがみるポイントになります。

貸出利息による収入に対して、どれだけの預金利息を支払っているかの割合は、下位行の方が若干上回っている傾向がありそうです。概ね貸出利息の20~30%が預金利息に使われています。0.25%の利上げで0.05%~0.075%が預金利息に回る計算です。尚、第四北越フィナンシャルグループは27.4%と預金(支払い)利息の割合が高いですが、これは預かった預金の貸出率が68.1%と低いためだと思います。貸出率がひくいのに利ざやの伸びが確保できているということは他行よりも貸出利息を上げることが上手くいっているのだと思います。

項目富山銀行鳥取銀行筑邦銀行東北銀行横浜FG第四北越FG
1Q決算_経常変化22%減益52%増益2.3倍増益5.3%増益18.6%増益44.2%増益
利ざやの伸び1.4%7.6%3.4%7.8%15.6%14.9%
貸出利息(収入)伸び119%120%120%117%121%126%
預金利息(支出)伸び194%178%205%169%143%169%
預金利息/貸出利息31.0%26.4%28.4%22.8%25.0%27.4%
貸出率72.4%86.3%71.5%75.7%87.3%68.1%

また資金量(預金)に対して、どれだけ貸出を行っているのかも利ざやに関係します。比較している銀行の中では横浜フィナンシャルグループと鳥取銀行が86~87%と高く、第四北越フィナンシャルグループが68%と低くなっています。他3行は70~75%ほどです。貸出残高が多いほど利息の絶対額は増えますので利ざやは大きくなります。

下位行の利益構造 -株式等の売却益が増減益の差になっている‐

それでは鳥取銀行や筑邦銀行のように経常利益が大きく増加した下位行は何で稼いだのでしょうか?
その理由の1つが株式売却益です。各行の貸借対照表で「その他業務収益」と「その他経常収益」を見ると増益の銀行は大きく「その他経常収益」を伸ばしていて、これが利益の伸びの源泉になっています。このその他経常収益の多くの部分を株式売却益が占めているようです。株での利益は一過性である場合も多く、コンスタントな利益に繋がらない可能性があります。やはり本業(利ざや)での収益によって四半期毎にしっかりと稼げなければ今後の利益の伸びは期待できなくなります。その点、上位2行はその他経常収益の伸び率は下位行に比べて低いのにかかわらず、確実に増益を達成しています。金利上昇を利ざやという本業での利益を稼げているからだと考えられます。

項目富山銀行鳥取銀行筑邦銀行東北銀行横浜FG第四北越FG
その他業務収益-8.8%98.5%6.3%0.3%12.4%25.2%
その他経常収益-12.0%234.4%634.6%184.1%14.7%62.5%

また下位行にかかわらず銀行は利率の低い国内債を多く抱えています。資金需要が少なかった低金利のタイミングで債券を多く買っていたことが要因です。国内債の含み損と株式の含み益を相殺したりと利益をコントロールしています。ただ資金需要の少ない地方銀行は相対的に多くの国内債を保有しており、その含み損に苦しんで収益が上がらないという面もあります。

下位行は経費率負担が大きい

下位行は経費増加が大きい傾向がみられます。その他業務費用は富山銀行が20%程度の伸びでしたが、筑邦銀行は100%を超え、鳥取銀行に至っては408%です。一過性の費用であればよいですが、物価も人件費も上がっているのでコストの伸びは、利益の小さい下位銀行の利益を大きく圧迫してしまいます。経費(費用)の傾向もしっかりとウオッチして、一過性なのか持続性があるのかを見極める必要があります。

項目富山銀行鳥取銀行筑邦銀行東北銀行横浜FG第四北越FG
その他業務費用20.5%408.2%119.0%266.8%29.4%47.2%
営業費用4.5%3.3%4.2%2.0%3.2%-2.4%
その他経常費用-95.7%115.1%-48.1%-68.4%7.4%-2.5%

下位銀行は自己資本比率が低いのも還元に対してネック

下位銀行は自己資本比率が低いのも課題です。国内基準は4%(BISは8%)ですので基準に対しては十分な自己資本を保っていますが、上位大手行は10%を超えている銀行が多いですが下位行は10%に満たない銀行が多くなっています。
また自己資本比率の低い下位行の中には公的資金の返済が完了していない銀行もあります。東北銀行とここに記載はないですが豊和銀行はまだ公的資金の返済が完了していません。こうした銀行は利益を資本増強や還元よりも返済が優先されますので、仮に利益が上がっても還元には時間がかかると思います。

項目富山銀行鳥取銀行筑邦銀行東北銀行横浜FG第四北越FG
自己資本比率9.28%‐国内8.95%-国内8.7%-国内8.62%-国内14.94%-BIS12.07%-国内
公的資金100億

債券の含み損 -東北銀行の有価証券含み損は156億円!‐

直近で政策金利は1%、長期金利は3%ほどになり金利が上昇しています。そのため債券価格が下落しており、保有する債券の含み損が拡大している銀行があります。本来金利の上昇は本業に有利なはずですが、債券価格の下落により財務を悪化させてしまっている要因になっています。この含み損が資本や本業の利益、株式やその他の資産の含み益で相殺できるレベルであればよいですが、それらを大幅に上回っている状態だと非常に苦しい状況になります。

有価証券の評価損益を並べてみると違った景色が見えます。ここに島根銀行も並べてみましたが、東北銀行と島根銀行の有価証券含み損が突出しています。純利益が数億~10億円ほどに対して100億を超える有価証券の含み損はかなり厳しいですね。東北銀行はQUOカード優待で興味がありましたが、見送ろうと思います。
どの銀行も金利上昇によって国内債の含み損が大きく拡大しています。横浜FGでは1,000億円弱、第四北越FGでも677億円もあります。しかし株高により保有株式の含み益で有価証券全体では大きく含み益を抱えています。筑邦銀行は91億円もの債券評価損が残っていますので、株式の売却益で業績の上方修正を続けることはできなさそうです。本業での利益拡大が必須になりますね。

項目富山銀行鳥取銀行筑邦銀行東北銀行横浜FG第四北越FG島根銀行
有価証券評価差額2,377▲1,769▲1,437▲15,620181,172114,800▲13,023
株式5,2851,1128,4141,031213,172153,600
債券▲3,550▲2,533▲9,163▲16,258▲99,839▲67,700▲8,133
外国証券▲60
その他642▲348▲626▲39368,13429,000▲4,890

結論:選ぶ銀行次第で金利上昇で株価の伸びる出遅れ下位銀行の株式もありそう

利ざやは少なく、経費が掛かる、株式の利益は一過性であり、低利の国内債含み損を抱えていれば、下位行の伸びはそれほど期待できそうにないように思えます。正直、分析しても下位行を買うよりもメガバンクや利ざやを伸ばしている中上位地方銀行を購入するほうが建設的というのが、利上げ局面で言えることかと思います。但し、すでにかなり株価が上がっているので

その一方で、銀行によってはある程度の株価の伸びが期待できるものはあるかと思います。不良債権が少ないこと、公的資金の返済が完了していること、国内債の含み損が少ないこと など利益の足かせが相対的に少ない下位行であることが前提です。

下記は先日公表された27年3月期第1四半期の資金(預金)量と貸出金です。そこに0.25%の利上げによる貸出金利息増 と 預金利息増を1%(調達率40%)として計算すると、利ざやは下記のように増えます。そこに「その他業務費用」「営業費用」「その他経常費用」の伸びを8%(人件費増と物価高)として計算すると資金量の少ない下位行でも2~5億円の増益が見込めます。横浜フィナンシャルグループの196億円と比べるととすずめの涙ですが、ここで見たいのは発行株式数です。

項目富山銀行鳥取銀行筑邦銀行東北銀行横浜FG第四北越FG
資金(預金)量518,9791,060,448836,505933,77020,264,2728,639,132
0.1%費用増▲519▲1,060▲837▲934▲20,264▲8,639
貸出金375,697914,793597,781707,29517,687,3425,879,991
0.25%増9392,2871,4941,76844,21814,700
利ざや増4201,22765783423,9546,061
3費用増(8%)▲217▲225▲497▲270▲4,358▲2,322
ネット利益増20397116156419,5963,739

例えば富山銀行は発行株式数が544.4万株です。2.03億円の利益をこの株式数で割るとEPS(1株益)が37.3円ほど増えます。横浜FGの発行株式数は114,461.6万株(11.4億株)ですので、EPSの伸びは17.12円となります。つまり2億くらいの少ない利益でEPSが大幅に伸びる可能性があり、大きな業績の伸びは期待できなくても株価の上昇は多少なりとも期待できる要素があります。もちろん逆もまた然りで、2億程度の損失で37円ものEPSが下がるため、損失への影響も大きいです。

可能性の話なので、どちらが良い悪いということではありません。銀行株で安定性と収益性、将来性を望むならやはりメガバンクや上位地銀の購入がおススメできると思います。その一方で下位地銀のなかにも株価を押し上げる可能性を秘めた銘柄もありそうです。それには損失可能性の回避(不良債権や含み損少ない)、公的資金などの資本の足かせがないこと、有価証券の含み損がない(少ない)ことが求められます。更にはEPSの伸びをきちんと株主に還元する仕組み、例えば配当性向や累進配当の明記なども必要かと思いますので、中計などの資料を読み込んで可能性を秘めた銘柄、予想を外しても配当と優待である程度インカムで利益を享受できそうな銘柄を選んでいければと思います。

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