らと は投資資産の50%、配当総額の59%をコスモエネルギーホールディングス(以下コスモ)に依存しています。以前の記事の通り原油で利益を得ようと考え、試行錯誤の結果、当時財務が最も悪く株価が低かったが、営業利益率(稼ぐ力)はほぼ同程度でしたので、コスモに投資しました。そのままコスモを買い増しし続ける一方で、ENEOSや出光興産の株は検討したものの購入していません。そこで石油元売り3社を比較し、見直しの余地があるか検討してみました。
結論:コスモエネルギーホールディングス保有を維持。理由:目先の配当金と資源開発
石油元売り各社の中期経営計画を比較した結果、らと はコスモエネルギーホールディングスの保有を継続する意思を改めて持ちました。理由は将来事業に対するサプライチェーン上流である資源開発について強化する戦略が見えたことと目先の配当利回りが一番よいからです。
上流にこだわるなら、INPEXや石油資源開発が本筋だろうと思いますが、株価の下がっているコスモとバーターしてまで乗り換える強い材料は個人的にないです。
各社のIR資料を比較しながら、どこに差があるのか、どこが有望か、期待できる事業はなにか、など投資のヒントになれば幸いです。ただどこの会社も素晴らしい企業でどこも捨てがたく感じました。
配当方針:各社ともほぼ横並び。累進配当明記のENEOS/出光が好ましく見える
インカム投資家として、配当方針は重要確認項目です。現在の中期経営計画に謳われている株主還元方針を見てみましょう。書き方に若干違いがあるものの、各社下限配当は明記されています。コスモは累進配当の記載はないので減配のリスクはありそうです。DOEは各社記載なし、総還元性向はコスモが10%多いですが、2社の50%でも十分な還元と言えます。配当性向は各社40%を下回っており、総還元性向との差は各社自社株買いになっています。
気になる点として、ENEOSと出光興産は自発的な株主還元を設定してきましたが、コスモは物言う株主(シティインデックスイレブンス)の圧力によって強化してきた経緯があり、今後の還元姿勢に変化が出ないか、文化として株主還元が身についていくのか、しっかりと見守っていきたいところです。
| 社名 | 下限配当/累進配当 | DOE(%) | 株主還元率 (配当+自社株買い) | 配当性向 26年 |
|---|---|---|---|---|
| ENEOSホールディングス | 起点30円 / 累進配当を明記 | 記載なし | 在庫影響除き利益50%以上 | 35.4% |
| 出光興産 | 下限36円 / 累進配当を明記 | 記載なし | 総還元性向50%以上 | 25.6% |
| コスモエネルギーホールディングス | 下限165円 / 累進配当記載なし | 記載なし | 在庫影響評価除き利益 3年間累計60%以上 | 36.4% |



事業規模:ENEOSの圧倒的な国内シェア、出光の規模は安心感がある
直近の2026年3月期の売上/利益の比較は下記のとおりです。売上から見る企業規模は、ENEOSや出光興産が圧倒的でコスモの規模の小ささが目立ちます。規模が大きいとやはり安心感があります。社会情勢の不安定さ、地政学的なリスク、地震などの自然災害 など多くのリスクはあります。規模の大きさはこうしたリスクに対し強さを発揮します。一方で利益面では規模の小さいコスモが良い成績に見えます。基準がIFRSか日本基準かの差(ENEOSはIFRS)もありますので、違いを理解した評価が必要です。

財務指標:財務健全性はENEOS、出光興産が高い。コスモは改善のスピードがgood
各財務指標を見ますと、自己資本比率、ネットD/EレシオがENEOSと出光興産がよい数値であり、コスもは単純比較でみるとよくない状況です。ただ、らとが購入し始めたころのコスモの自己資本比率は16.5%で、ENEOS(当時はJXTG)が32.1%でしたので、ここ10年でコスモの財務は急速に良くなっていることは好感されます。また物言う株主の登場により、自己資本6000億円を超える分は追加還元を明記したため、やむを得ない部分もあるかと思います。らと個人的には自己資本比率は40%あると安心感があります。今後についてはコスモの継続的な財務改善に期待しています。
中計の目標とする指標も多少のバラツキはあるものの、規模以外は概ね似たような目標値になっているように見受けられますが、原油価格や為替レートの前提が異なるので、保守的なENEOSが達成や上振れの可能性が高いのかなと思われます。上振れは株価や配当に強い期待が持てる要素です。




事業内容、事業ポートフォリオ:似た事業構造だが、出光とコスモにも独自性がある
石油元売り3社の事業はとてもよく似ていますが、幅の広さの差や特長が出ています。
ENEOS はやはり最大規模の会社らしく、石油事業、石油化学、資源開発、素材、電力すべてがバランスよく手掛けています。特長は合成ゴムでしょうか。調達や販売の幅がとても広く安定感があります。
出光興産 は、3社の中で①電子材料:高性能有機EL材料、全固体電池の開発 ②資源開発 アジアやノルウェーで中東がない の2点に大きな特長がみられます。
コスモエネルギーホールディングス は、半導体用フォトレジストに特長がみられます。また他の2社は上流資源開発権益の幅が広いがコスモは中東集中、再エネ事業は風力発電と特化型になっているのも特長です。
これを見ると資源開発において中東依存度の高いコスモエネルギーホールディングスは今回のイラン戦争の影響を色濃く受ける理由がわかります。半導体関連素材を作っているということで期待もありますが、AIブームには全く乗ってこなかったですね。原油の方が圧倒的に事業への影響が大きいので仕方ないですが。

将来性:中期経営計画での期待値 -上流開発への積極性の高いコスモに期待を感じた
中計を制定した時期も違いますので一概に比較はできない部分もありますが、今の資料上での期待値がどこにあるのかを検討してみたいと思います。やはり将来性を考える上では、効率化よりも事業の幅をどこに広げるのか、他社に負けない新開発・新技術をどう持つのか、収益の高い資源開発の戦略を持っているかを重点的に見てみました。
資源開発上流は、3社とも天然ガス、LNGに力を入れる記載は共通しており、原油とくらべ環境負荷の低いガスが脱炭素社会に向けた必要な対応だと思います。その中でコスモは、原油開発の拡大として生産量の最大化や新鉱区開発を謳っており、脱炭素に反するように見えますが、好ましく思いました。また資源開発としてリチウムなどの重要鉱物の資源開発を手掛けるというのも上流好きの心をくすぐります。また、ENEOSの合成ゴム、出光興産の全固体電池素材やコスモの半導体用フォトレジスト素材、ノルボルネンといった期待の新開発や他社がマネできない高機能材には期待したいところです。



2026年3月各社事業別売上高/利益/利益率 -コスモの利益創出の強さと脆さが見える‐
最後に各社の事業別売り上げと利益・利益率を比較してみます。但し、各社の区分けに違いがありそうなので、単純比較はできないものもあります。例えばENEOSには基礎化学品がありません。おそらく石油製品ほかに含まれています。コスモは高機能材がありません。半導体用フォトレジストなどの機能材は石油化学に基礎化学品とセットになっていると考えられます。
石油事業(燃油、基礎化学、機能材)トータルの利益率は、ENEOS 2.8%、出光 2.6%、コスモ 2.8%と各社ほぼ同じくらいです。
資源開発は各社利益は大きいですが、利益率に大きく差がみられます。コスモは50%でINPEXに並びます。ENEOSは23.4%、出光も16.3%と高収益ですが、コスモの中東特化型が秘訣でしょうか。
電気/再エネですが、まず再エネだけで比較すると、ENEOSと出光はまだ赤字ですが、コスモは黒字で利益率17%と高いです。一方で火力発電(電気)やガス販売をもつエネオスは売上も高く6.3%とよい利益をたたき出しています。出光にも火力発電はありますので、再エネはまだまだ利益途上と見えます。こうしてみると、やはり①更なる上流(資源開発)への投資、②基礎化学品の利益率改善への取り組み ③再生エネルギーの競争力 で コスモに期待が持てます。

将来リスク -元売り3社への投資リスクを考える-
共通するリスクは、エネルギー革命による代替エネルギーの開発です。夢のエネルギーと呼ばれる核融合発電は人類には有望ですが、既存エネルギー企業にとっては脅威です。簡単に実現する技術ではなく2050年ごろに本格的な普及・商業化と言われておりますが、科学技術の発達は急速に進んでいるため、早まる可能性もあります。それでもあと10年は実現しないでしょうし、原油の役割はエネルギーだけではありませんので、一気に業績が悪化することはないと思いますが、注目したい点です。
次に電気自動車などの電動化です。これもガソリンの使用量が減る要因です。EUが2030年以降の電気自動車販売の促進を遅らせたり、世界的に補助金が縮小されたりと電動化の逆風も見られます。航続距離など技術的な課題もありますが、徐々にでも普及は進んでいくと考えられます。
ENEOS特有のリスクはあるでしょうか?正直、出光興産やコスモの経営が問題なくて、ENEOSだけが何らかの要因で経営危機となる要素は見当たりません。地震などの自然災害はリスクですが、事業や拠点の幅が広いので、代替を利かせられるのは強いです。
出光興産特有のリスクについてはどうでしょうか?出光興産は規模も大きく全固体電池でガソリンの需要減少を補う施策をしており、保有技術とかみ合った事業を展開していて隙は少ないと思います。あえて挙げれば全固体電池が思ったほど普及しないとか、海外に技術をマネされシェアが伸びない、温暖化で石炭への逆風で利益が下押しされることくらいでしょうか。ただ原油も石炭も重要な資源であり、今回のような中東危機では石炭火力が容認されるなど、利便性には逆らえない世の中なので、大きなリスクにはなりえないと考えられます。
コスモは会社規模が相対的に小さいため、特化型した部分に影響があると経営に大きなダメージとなるリスクがあります。現在の中東危機はその1つです。また風力発電の競争激化、別の再エネ開発により必要とされなくなるなどで、再エネ事業が停滞するのもリスク要因だと考えられます。
最後に -まとめ:稼ぐ力はほぼ同じ。であるならエネルギーはENEOS(+INPEX)が王道-
規模や企業の安定性に期待するなら、ENEOSと思います。圧倒的は規模、好財務、調達や客層の広さなど事業が簡単に転んでしまう要素は見当たりません。安定した成長と、還元を実現してくれそうです。
規模や安定性に加え、独自の技術発展に期待するなら出光興産だと思います。全固体電池がどのような発展を遂げ、電気自動車やそのほかの蓄電技術に貢献し、どれくらいの利益が見込めるのかはわかりませんが、世界初の技術には心弾みます。あと簡単にマネされない技術であって欲しいです。
規模は小さくとも高利益の上流資源開発への取り組み、また半導体用フォトレジスト素材、ノルボルネンなどの石油化学・機能製品の将来性、風力発電に期待が持てるならコスモエネルギーホールディングスだと思います。
各社稼ぐ力はほぼ同等と思います。将来期待するポイントでどこに投資するかになりますが、程度の差はあれど基本的に各社優良企業で外さないと思います。らとは上流開発期待でコスモですが、このセクターはENEOSに投資するのが王道なのかと上記の比較して認識させられました。エネルギーセクターへの投資を増やすなら、ENEOS+INPEXがよいと思います。


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